現役の時はICTがらみの仕事をしていたので、地域のシニアのサークル内でもその領域のことでいろいろと質問を受けることがある。
今週は、星の写真撮影を楽しんでいるというメンバーから質問を受けた。
なんでも赤道儀を付けたカメラで撮影した複数の写真を重ねて画質をあげるのに、Stella Image 9という天体写真の画像処理ソフトを使い始めたそうだが生成されるftsファイルがうまく扱えなくて困っているということだ。私自身扱ったことのないソフトなので、ちょっと調べてみましょうということにした。
調べると、Stella Image 9はAstroArts社がリリースしている国内で最も定評のある天体写真用ソフトのようである。
有難いことに無償で1ケ月試用させてもらえるうえに、テストするためのサンプル画像もいくつか用意されているので、早速ダウンロードして使ってみた。
サンプル画像はライト、ダーク、フラットと分けて用意されているが、この領域の経験がないので何それ?である。ちょっと勉強すると、「天体を撮影した画像」がライトフレーム、キャップをして「ノイズのみを記録した画像」がダークフレーム、「何も写っていない均一な光源を写した画像」がフラットフレームということが分かってきた。Stella Imageは、画像ファイルを指定して実行すると自動的にコンポジット処理をして結果をftsファイルにしてくれる。大まかな言い方をすると、自動的に位置合わせをしながら、複数の画像を足したり、引いたりしてノイズを消す処理をしてくれるようだ。真剣に取り組んでいる人には「そんな単純なものじゃない」と怒られそうだが、どういう世界かちょっと覗いてみようというだけの素人なのでそのくらい分かったところで私としては納得してしまった。具体的には、サンプルとして用意されているM42星雲の5490x3670ドットのライトフレーム12枚、ダークフレーム4枚、フラットフレーム4枚を指定して1分くらいガラガラ廻すとftsファイルができ上る。
天体写真の世界では、fits(Flexible Image Transport System) FormatというNASAや国際天文学連合が支持している標準的な天文学用のデータフォーマットが広く使われていて、ftsというのはWindowsでfits形式のファイルに付けられる拡張子である。そのftsファイルを開くには特定のソフトウェアが必要で、Windowsであれば、前出のStella Imageやフリーの画像処理ソフトとして定評のあるGIMP2で開くことができるようである。
Stella Imageでは、生成された画像を保存する際に形式を指定することができ、例えばjpegに変換して保存することができる。下はそうして作成したM42のjpeg画像である。
ちなみにM42というのはオリオン座にあるこんな星雲である。
Stella Image 9は、明るい部分を選んで合成する比較明合成でも威力を発揮するようだ。サンプルにインターバル撮影したレインボーブリッジの多数の画像があったので試してみると、例えばそれを100枚コンポジットするとこんな感じの画像が作れる。枚数を増やすと、北極星を中心に回転する星の軌跡が表現できるのだろう。
なかなか奥の深い世界のようである。
技術的な細部は分かっていないが、複数の画像ファイルを指定して、コンポジット処理をして作成した画像を印刷するというソフトの基本的な使い方は一応確認できたので、相談を受けた知人にはこれで何かアドバイスできるかもしれない。
複数の写真を重ねて画質をあげるコンポジット処理については見聞きはしていたが、実際に自分の手で扱ったことはなかった。ひょんなことからその入り口をちょっとだけ覗かせてもらったが、今まで知らなかった世界を体験できたのは新鮮で面白かった。