外出から帰っていると今日は箱根の稜線が夕焼けの中でよく見えていたので、急いで家に戻って眺めた。
というのも、これが見納めになるかもしれないからである。
これまで、空気が澄んで晴れた日には、家から箱根の外輪山が見えるので、それが楽しみであった。
季節ごとに違った顔を見せる、金時山、明神ヶ岳、神山、駒ケ岳、上二子岳、下二子岳と続く山並みが見えると、何か幸せな気持ちにさせてくれたものだ。
春先はすがすがしく、秋の夕焼けに浮かぶシルエットは美しく、雪の降った朝は神々しくさえあった。
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ところがである。
今年突然、何の断りもなしにD社のマルチテナント型物流施設なるものの建設が始まり、その眺望が奪われようとしているのである。
計画を見ると、5階建が予定されているので、出来上がると、金時山、明神ヶ岳、神山は完全に、駒ケ岳は半分が隠されてしまう。
現在、すでに4階まで組みあがり、金時、明神ヶ岳、駒ケ岳は風前の灯状態である。
将来歳老いて、あまり出歩くことができなくなったときは、窓から見える箱根の山並みを見るのが楽しみになるのだろうと思っていたのだが、そんな夢をぶち壊されてしまった。乱暴な話である。
一般庶民は、ただそれを受け容れるしかないのか。腹立たしい限りだが、無力である。