オッペンハイマーの名前を初めて知ったのは60年近く前の小学生の時です。小学校の理科室の壁に貼ってあった科学史年表にガリレオ、ニュートン、アインシュタイン等と並んで一番右端に最近の科学者として原子爆弾とからめてその名前が書いてあったからです。
原爆の父とも言われる人物ですが、そんなものを一人の人間で作れるはずはなく、この人物がどう関わり、何を考えていたのかを知りたいとずっと思っていました。
そんな人物をテーマにした映画が作られ、しかもそれがアカデミー賞で作品賞を始め7部門で受賞したということで絶賛されています。興味がわいて一昨日観てきました。
私は映画はあまり見ないし、監督や俳優のことはよく知りません。それでこの映画についてどうこう論評する資格はないのかもしれませんが、ちょっと私が期待したものとは違っていたというのが率直な印象です。
映画では、戦後に開かれた2つの公聴会、聴聞会とそれ以前のオッペンハイマーの映像が何度も入れ替わるので混乱させられます。
戦後がモノクロでそれ以前がカラーで表現されていたようですが、始めて見て登場人物の関係や背景がしっかり頭に入ってないと付いて行くのが大変です。
私としては、オッペンハイマーがどういう経緯で原爆開発に関わるようになったのか、そこでの葛藤はなかったのかを知りたかったのですが、その辺りはあまり描写されません。
戦後、原爆が引き起こした惨状を映像で見て苦しむシーンが少しだけあったり、悔恨の言葉が語られたりもするのですが、それも短いシーンでしか描かれていないのであまり伝わりません。
それよりも、オッペンハイマーが戦後、より破壊力のある水爆の開発に反対するようになったことの説明のために、水爆推進者の公聴会やオッペンハイマーのスパイ容疑に関する聴聞会の様子が長々と繰り返し出てくることになにか違和感を感じさせられたのです。
これだけ評価を受けているのですから、深遠で綿密な構成がなされているのかもしれません。しかし、何の予備知識もなしに一度見ただけではそれを感じ取ることが私にはできませんでした。
恐らく、2,3回観ないと作品が意図したことは理解できないのかもしれません。
余談ですが、観たのは木曜日の午後で、観客は10人程度でした。後ろの席の人が、何か食べる音がうるさいなあと思っていたら、そのうち寝息が聞こえてきました。前の席のおばあさんは、途中で席を立ち、トイレかなと思っていたらそのまま戻ってきませんでした。皆さん、3時間の映画を理解するのに苦労されていたのかもしれません。
もしこれから観ようという人は、事前に下のリンクにある記事を読んで予習して観るのをお勧めします。