Facebookで友人がこんな本を紹介していました。
私は考古学にそれ程関心があるわけではありませんが、データサイエンスが解くというタイトルが気になります。
これまで、邪馬台国があった場所については北九州説と畿内説があるのは聞いていますが、99.9%福岡県にあったと主張しているのは福岡県出身の私としては興味をそそられるところです。
なにかこれまで見落とされていたことをデータサイエンスを駆使して洞察し、そういう結論を導き出したのでしょうか?
Kindleでダウンロードして読んでみました。
著者の安本美典氏は以前からこのことをいくつもの本で著していたようで、この本で初めて論じられたことではないようですが、その主張は、ざっくり言うと、魏志倭人伝のなかの邪馬台国の記述に鏡、鉄鏃などがでてくるので、邪馬台国が存在したとされる3世紀の地層からそれらが多く出土する所に邪馬台国はあったと推定できるというものです。
出土数としては例えば以下のようなデータがあるようです。
福岡県 | 奈良県 | |
鏡の出土数 | 30 | 3 |
鉄鏃の出土数 | 398 | 4 |
そこで簡単な例としてまず次のような仮説を考えています。
(a)邪馬台国は福岡県か奈良県にあった
(b)邪馬台国の存在確率は、鏡と鉄鏃の出土量に比例して大きくなる
そうすると「ベイズの公式」によって、邪馬台国が
福岡県にあった確率 0.999
奈良県にあった確率 0.001
だというのです。
ベイズ推定は、事前の確率を得られた情報によって更新していくのですが、本の中ではその説明がないので、ここで改めて確かめると以下のようになります。
まず、福岡県にあった確率と奈良県にあった確率を理由不十分の原理で事前確率の分布を0.5ずつとします。
鏡の出土という情報による事後確率は
福岡:0.5x(30/33)
奈良:0.5x(3/33) です。
更に、鉄鏃の出土という2番目の情報を加えた事後確率は
福岡:0.5x(30/33)x(398/402)
奈良:0.5x(3/33)x(4/402)
となるので、その比は福岡:奈良=11940:12 となります。
正規化すると、福岡:奈良=0.999:0.001 です。
これが邪馬台国は99.9%福岡県にあったとするこの本の主張の論拠のようです。
本の中では、その他の出土品との関係も広く取り上げているので興味がある方は読んで頂きたいと思います。いずれにしても、上述したことを覆すものはないようです。
データサイエンスと言っても、簡単な四則演算だけの話なので少し拍子抜けしたのですが、それでもこれだけの差があれば勝負あった、でしょう。
畿内説をとなえる学者たちは、こうしたデータを無視しているのでしょうか? それともそれは分かったうえで、ありえないような可能性でもそれを解釈で押し切ろうとしているのでしょうか?
まあ、北九州だろうが畿内であろうが我々の生活には何の影響もないのでどうでもいいと言えばどうでもいいことです。
ただ、ベイズ推定は我々の生活のなかでも様々に応用されていて、その有効性は明らかです。身近なところではメールの自動振り分けなどにも使われているようで、それには随分お世話になっています。この考えを使わない手はありません。