The Fool In The Valleyの雑記帳

-- 好奇心いっぱいのおじいちゃんが綴るよしなし事 --

虚数単位の話

幼馴染の数学の教授がNHKで放送されている「笑わない数学」という番組をSNSで教えてくれたのですが、面白い番組なので欠かさず見ています。

今週のテーマは「虚数」。

それに対して、彼は次のような小話も紹介してくれました。

虚数である。しかし、i×i は実数(real number)になる。また、の 乗も実数になる。』
これを、人間の言葉に翻訳すると、次のようになるらしいです!
『愛は虚ろなものである。しかし、二つの愛が交差すると、リアルなものになる。また、愛の愛情(?)も、リアルなものになる。』 
 
工学の分野では複素数が有力な解析手段になるのですが、虚数単位に i を使うと電気の分野では電流と間違えやすいので、代わりに j を使います。
e=(R+jωL+1/(jωC))i
みたいな感じです。それのためか、回路以外で複数数で処理する場面でも
複素数を s = σ + jω
と書くことが一般的です。
「そこに i はないんか?」とアイフルの女将さんに怒られるかもしれませんが、電気の領域では  j なんです。(笑)


ところで、電流をどうして i で表すのでしょう? 電流だったらcurrentなので、c で良さそうです。でも、cはcapacitance(電気容量)に使われていたんで、しかたなくintensity of electric current から i を持ってきたようです。
ということは、電流を i と定義することが、虚数単位を i とするより前に
定着していたということなのでしょうか?
調べると、電流を i とすることは、1826年にオームがオームの法則を公表したことによるようです。一方、虚数単位を i とすることは18世紀にオイラーによって始められたようですが、その i を使った複素数の定義は1835年にハミルトンによってなされたとされています。
ということで、複素数を電気回路の解析に使おうとしたときに、i は電流に取られていたのです。ひょんなことから科学史を勉強することになりました。
ついでにもう一つ。
上述した小話で、 i の 乗も実数になる というのはどういうことなのでしょう? それを解説した記事は、Googleで「i の 乗は実数」と入れて検索するといくつも見つかるのですが、その検索窓に試しに i^i と入力すると、以下のように、主値の0.20787957635 を返してきたのには驚きました。