The Fool In The Valleyの雑記帳

-- 好奇心いっぱいのおじいちゃんが綴るよしなし事 --

観るポアロと読むポアロ

土曜にBS1で「名探偵ポワロ」を放送している。David Suchetが演じるポアロが原作のイメージ通りなので楽しめる。

www.nhk.jp

学生の頃、アガサ・クリスティポアロの登場するミステリが好きで、下のリンクでも紹介されている33作の長編作品はすべて邦訳で読んだ。

ja.wikipedia.org

それらを読んだ文庫本はほとんど捨ててしまっているが、30年ほど前に、将来リタイアしたらのんびりクリスティを原文で読んで過ごしたいなどと思って米国で買った3冊の本(長編が5編ずつ入っている)は手元にある。

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1990年頃米国で購入した3冊の本

Facebookで書き込んだものを検索すると、以前これらの中から”Thirteen at dinner"を2012年3月に、”The murder of Roger Ackroyd"を2017年1月に読んでいる。どうも、数年に一度くらいの周期で読みたくなるようだ。


4/10に放送された「メソポタミア殺人事件」を録画して観たのだが、この中の一冊にその原作に当たる”Murder in Mesopotamia"が収録されているのを見つけて久しぶりにそれを読んでみた。

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クリスティの作品は先月読んだジョン・グリシャムのそれと比べると長さは半分から1/3くらいなので手軽な雰囲気があるが、慣れないとすこしとっつきにくい。関係詞の多い文章は注意して読まないと「ん?」となることがたびたびで、入試の問題を読まされているようでもある。上品で格調が高いと言えるのかもしれないが、ちょっと古い英語なのだろう。しかし、そうした文章で丁寧に繰り返し記述される登場人物の容貌、性格、心理の描写は巧みで、読み進めると読み手の頭の中にそれぞれの人物のイメージが作られていく。1時間半ほどのビデオ作品では人物描写には時間はかけなれないし、観るほうもストーリを追うのに精いっぱいで登場人物を深く観察し理解することができなくて、なんとなくすっきりしないことがあるのだが、文章をじっくり読むと「そういうことか」と腑に落ちる。そういう楽しみ方を本は与えてくれる。
一方、ビデオでは風景、場所の雰囲気を視覚で感じられるのがいい。普段目にすることのない海外のものはより興味が増す。映像の持つ圧倒的な情報量は文章ではとても伝えきれないところを伝えてくれる。
ファンとしては両方を楽しませてもらえるのは有難いし楽しいことである。

 

ところで、原文を読むと馴染みのない常套句に出くわすのも面白い。
備忘のために記しておくとこんなフレーズがあった。

talk nineteen to the dozen
【意味】絶え間なくしゃべる。
12語しか必要ないところに19語使う、というところから来ているということ。

■A nod is as good as a wink to a blind horse
【意味】《めくらの馬にはうなずきも目くばせも無駄だ》
①(鈍感な人にはどんなヒントを与えても無駄である)
②(敏感人にはわずかなヒントだけで十分である)
本文中では A wink is as good as a nod to a blind horse と使われていた。

■play the deuce with
【意味】…をめちゃめちゃにする
デュースにこういう意味があるとは知らなかった。